横浜DeNAベイスターズは、桑原将志外野手のFA移籍に伴う人的補償として、埼玉西武ライオンズから古市尊捕手を獲得した。
外野の即戦力を失い、代わりに若手捕手を選択。
この決断に、違和感を覚えたファンも少なくないだろう。
しかし結論から言えば、この人的補償は極めて戦略的で、数年後に真価を発揮する補強である。
本記事では、感情論ではなく「編成の視点」から、この人的補償の意味を徹底的に掘り下げていく。
桑原将志という“失った戦力”の本当の重さ
桑原将志は、
- 外野全ポジションを守れる守備力
- 走塁意識の高さ
- チームを締める存在感
を兼ね備えた、数字以上の価値を持つ選手だった。
特にDeNAのような若手中心チームにおいて、
- 試合終盤の安定剤
- ベンチの空気を引き締める役割
- 若手の見本となる姿勢
という点で、代替が難しい存在だったのは間違いない。
それでもDeNAは、「桑原の代わり」を探しに行かなかった。
ここに、この人的補償の本質がある。
人的補償で即戦力野手を取らなかった理由
FAの人的補償でよくある選択は、
「今すぐ使える選手を1人取る」ことだ。
だがDeNAは違った。
- 外野は比較的補充しやすい
- 捕手は市場にほぼ出てこない
- 捕手育成には時間がかかる
という球界全体の構造を冷静に見ていた。
つまり今回の人的補償は、
桑原将志の“穴埋め”ではなく
チームの“基礎工事”
だったのである。
古市尊とは何者か
古市尊は、独立リーグ・徳島インディゴソックスから
西武に育成ドラフト1位で指名された捕手だ。
独立リーグ出身捕手の最大の強みは、
実戦数と修羅場経験にある。
- 年上投手を受けてきた経験
- 連戦の中での試合運び
- 勝つための現実的な判断
これはアマチュア出身捕手には得難い財産だ。
古市が支配下登録を勝ち取った理由も、
打撃ではなく守備・リードの安定感にある。
古市尊がなぜ人的補償に選ばれたのか
① 守備力は即戦力クラス
- 捕球が安定
- 二塁送球が速く正確
- 投手が安心して腕を振れる
これは、数字よりも現場評価が高いタイプの捕手である証拠だ。
② リードは「派手さはないが破綻しない」
奇をてらわず、
- 投手の調子を最優先
- 四球を出さない組み立て
という堅実型。
DeNAのように若手投手が多いチームでは、
最も必要とされるタイプである。
③ 打撃は課題、だが致命的ではない
打撃成績は物足りないが、
- 三振一辺倒ではない
- 役割を理解した打席に立てる
捕手として見れば、
「育成前提なら十分許容範囲」だ。
DeNAの捕手陣
ここで重要なのが、松尾汐恩の存在である。
現在の主力
- 山本祐大:現正捕手。安定感あり
ベテラン支柱
- 戸柱恭孝:控え捕手としての安心感
未来の中核
- 松尾汐恩:球団最高クラスのプロスペクト
松尾は、
「今すぐ正捕手にしたい存在」ではない。
「確実に成功させたい存在」だ。
古市尊は松尾汐恩を成功させるための存在
古市尊の加入によってDeNAは、
- 松尾を無理に1軍固定しなくて済む
- 2軍での投手育成を任せられる
- 捕手の競争環境を健全に保てる
という理想的な状況を作った。
これは偶然ではない。
松尾汐恩を中心とした捕手設計図が、はっきりと見える。
この人的補償の評価は「今」ではできない
桑原将志を失った今季だけを見れば、
この人的補償は“地味”に映るだろう。
だが数年後、
- 松尾汐恩が正捕手として定着
- 古市尊が安定したバックアップ
- 投手陣が継続して力を発揮
していれば、この補償は
「DeNAの分岐点」として語られる。
まとめ:桑原の代償は「未来を守る捕手」だった
この人的補償は、
感情を捨て、構造を取った決断だ。
- 即効性より持続性
- 派手さより土台
- 今季より次の5年
DeNAは、確実に次のフェーズへ進もうとしている。
古市尊は主役ではない。
しかし、主役を成功させるために最も重要な役者である。
桑原将志のFA移籍は終わりではない。
それは、DeNAが“勝ち続けるチーム”になるための始まりなのだ。


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